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ネット詐欺総研に
リニューアルいたしました
最新ロマンス詐欺はAIエージェントを駆使し、VR空間やゲームまで狩場を広げている
SNSやマッチングアプリで知り合った人と直接会うことなくやり取りを重ね、恋愛感情を利用して金銭をだまし取るロマンス詐欺が猛威を振るっています。15年以上前に流行り始め、ニュースなどにも取り上げられているのですが、いまだに右肩上がりで被害件数も被害金額も大きくなる一方です。
警察庁が2026年2月に発表した最新の犯罪統計資料によると、2025年におけるロマンス詐欺の認知件数は5604件、被害総額はなんと552.2億円となっています。既遂1件当たりの被害額は987.0万円と他のネット詐欺と比べて高額で、老後資金や退職金といった被害者の長年の蓄えを根こそぎ奪い取ったり、借金をしてまで送金させたりするなど、被害者の人生を破壊する深刻なケースが増えているのです。
今回は、進化し続ける最新のロマンス詐欺の手口や被害を防ぐための回避策について解説します。

警察庁発表の2025年SNS型ロマンス詐欺被害額の推移を示すグラフです。
出典:https://www.npa.go.jp/bureau/safetylife/sos47/assets/img/new-topics/detail/260213/03/r7_sagi_data_02.pdf
AI技術の進化によって完全に自動化されたロマンス詐欺の手口と無効化される本人確認
従来のロマンス詐欺といえば、海外の軍医やパイロット、裕福な起業家などを名乗り、ネット上の美男美女の写真を無断転載してターゲットに接近する手口が一般的でした。翻訳ツールを通したような不自然な日本語で甘い言葉を囁き、数週間から数ヶ月かけて信頼関係を築いた後、「日本に行くための渡航費が足りない」「荷物が税関で止められてしまい解除費用が必要だ」といった架空のトラブルを理由に、銀行振込や電子マネーでの送金を要求するのが典型的なパターンです。一時期は、私たちNPO法人デジタルリテラシー向上機構にも毎日のようにロマンス詐欺被害の相談がありました。
しかし、こうした古典的な手口は、ニュースなどでの注意喚起が広く浸透したことに加え、相手の顔写真を画像検索して偽物だと見破る手法が一般化したことで徐々に廃れてきており、以前のように簡単に騙される人は減ってきました。
そこで詐欺グループは手口を進化させました。近年のロマンス詐欺を語る上で避けて通れないのが、生成AI技術の悪用です。詐欺グループは最新の自律型AIエージェントを利用し、ターゲットのSNSの投稿履歴を読み込み、趣味や休日の過ごし方、さらには過去の恋愛状況までをプロファイリングします。そして、孤独を感じやすい深夜や休日のタイミングを見計らい、心の隙間を埋めるようなメッセージを自動で送信してくるのです。人間が手作業で行っていた頃とは比べ物にならない精度と速度で、多数のターゲットに対して運命の恋人を演じることが可能になっています。
さらに恐ろしいのが、ディープフェイク技術のコモディティ化です。以前は、つたない合成写真や無断転載した写真だったので注意すれば気づくことができました。しかし、現在では、リアルな写真を簡単に生成できます。オリジナルの画像なので、検索してもヒットしません。
さらには、リアルタイムで表情豊かに動く偽のビデオ通話映像を作り出すこともできます。被害に遭った人に話を聞くと、何度もビデオ通話したが、怪しいところに一切気づかなかったと言います。画面越しに魅力的な相手が微笑みかけ、こちらの質問に対して自然な声で相槌を打つのを見たら、疑うことができないのも仕方ありません。従来であれば、ビデオ通話に対応しないならロマンス詐欺を疑う、という対応策があったのですが、今では逆に騙すための手段になってしまったのです。

現在の生成AIは、架空の人物の様々な写真も手軽に生成できます。
マッチングアプリからメタバースへと拡大するロマンス詐欺の狩場
警察庁の報告では、ロマンス詐欺の入口として最も利用されているのがマッチングアプリです。しかし、詐欺グループは手を変え品を変え、私たちが日常的に利用する多様なプラットフォームに罠を張るようになっています。
例えば、音声通話アプリのDiscordでは、月に400件以上の被害相談が寄せられています。ここでは純粋な恋愛関係というよりも、ゲームの協力プレイを通じて何ヶ月もかけて友情や親近感を育み、最終的に一緒にNFTプロジェクトに投資して将来の資金を作ろうと誘い込む手口が横行しています。
また、テキストベースのSNSであるThreadsでは、著名なインフルエンサーや起業家を巧妙に詐称したアカウントが暗躍しています。あなただけに特別なビジネスの話を教えるとDMで接近し、選ばれたという優越感をくすぐりながら高額な投資へと誘導していく手口で、月に300件以上の被害が報告されています。
さらに近年急増しているのが、VRChatなどメタバース空間でのロマンス詐欺です。アバターの姿で長時間同じバーチャル空間を共有し、音声で語り合うことで、現実世界の容姿や年齢に関係なく強い精神的な結びつきが生まれます。この仮想空間での結婚体験をエサにして、現実世界でも一緒に暮らすための資金が必要だと迫り、890万円を騙し取ったケースも発生しています。
ブラッド・ピット氏のような超有名人を装って支援を求めたり、配偶者を亡くしたと共感を得ようとする事例や、海外の起業家を装う古典的な設定をAIで高度に洗練させた事例など、プラットフォームごとにターゲットを細分化し、最適なペルソナを使い分けるのが最新ロマンス詐欺の手口です。

フランスの女性がAIで生成した、俳優のブラッド・ピット氏を信じて1億3000万円を騙し取られました。
※gemini生成
恋愛感情と暗号資産投資を組み合わせた豚の屠殺と呼ばれる凶悪な手口
現在猛威を振るっている被害のほとんどは、純粋に愛の言葉だけでお金を無心する古典的な手口ではなく、投資詐欺を組み合わせています。この手法はターゲットを豚に見立てて、愛情という名の餌を与えて太らせ、最後に全財産を一気に刈り取るという残酷な手口から、中国語の「殺猪盤」を直訳した「豚の屠殺詐欺」という恐ろしい名前で呼ばれています。
詐欺師はSNSやマッチングサイト、ゲームなどから、LINEやTelegramなどの外部チャットアプリへターゲットを誘導し、他者の監視が届かない密室を作り上げます。毎日の何気ない会話の中で「最近、暗号資産の取引で大きな利益が出たから、二人の将来のために少しだけ試してみないか」などと、自然な流れで投資話を切り出します。
指示された通りに偽の投資アプリをインストールして数万円を入金すると、画面上では確実に利益が増えていくように見えます。ターゲットが疑念を抱いて出金を試みると、最初のうちは実際に手元へお金を引き出せるように設定されています。この小さな成功体験が罠となり、相手への信頼とプラットフォームへの安心感が揺るぎないものに変わります。
もっと大きな利益を出して早く一緒に暮らそうという甘い言葉に乗せられ、被害者は定期預金を解約し、消費者金融から借金をしてまで数百万円、数千万円という資金を次々と暗号資産で送金してしまいます。いざ大金を引き出そうとした瞬間、事態は急変します。
偽のカスタマーサポートから「高額な利益に対する税金を先に納める必要がある」「マネーロンダリングの疑いがかかっており凍結解除のための保証金が必要だ」と追加の支払いを執拗に要求されます。これ以上は1円も出せないと分かった途端、アプリにはログインできなくなり、恋人だと思っていたアカウントは消滅します。残されるのは莫大な借金だけです。

ロマンス詐欺と投資詐欺は最悪の組み合わせで、大きな金銭的被害を出しています。
※gemini生成
最近では、このデジタルな親密さが現実世界の危険を引き起こすケースも確認されています。親しくなった相手に、自宅のスマート家電を操作するアプリのアクセス権やWi-Fiのパスワードを何気なく共有してしまい、そこからネットワークに侵入される事例です。
詐欺に気づいて連絡を絶とうとした途端に、深夜に部屋の照明が点滅したり、監視カメラの映像をもとに脅迫されたりといった、実生活を脅かす二次被害に発展することもあります。オンラインで出会った相手に対しては、どれほど親密に感じていても、自分の資産や物理的な生活環境に直結する情報を絶対に渡してはいけません。
相手が誰であるかではなくどのような金銭的要求をしてきたかで判断する新しい防衛策
進化するロマンス詐欺の被害に遭わないために、私たちの防衛策も更新する必要があります。どんなに魅力的な顔立ちで、毎晩ビデオ通話で優しい言葉をかけてくれる相手であっても、お金やアプリのインストールを求められたら、信頼度を一旦ゼロに戻す勇気が求められます。画面越しの相手がどれほど完璧な恋人を演じていても、暗号資産や税金、手数料、投資アプリといった言葉が出た瞬間に、連絡を断つ必要があると肝に銘じておいてください。
少しでも違和感を覚えたら、一人で抱え込まずに消費者ホットラインの188番や警察の相談窓口に連絡を入れることが最悪の事態を防ぐ手段となります。自分の目で見たものすら疑うという厳しい防衛意識を持ち、周囲の人々や専門機関と情報を共有しながら、この見えない脅威から自分自身と大切な人の未来を守り抜いていきましょう。
このページを書いた人
柳谷智宣
NPO法人デジタルリテラシー向上機構(ドリス)代表理事/ITライター
1998年からITライターとして活動しており、現在はAI、サイバーセキュリティ領域をメインに執筆する。2018年から、NPO法人デジタルリテラシー向上機構(ドリス)を設立し、ネット詐欺の被害をなくすために活動している。